「お宝」雑誌

 「古本屋グラッパ」のウェブサイトを作ってから1年余り、名前だけつけながら1冊も商品をならべなかった棚がありました。
 「雑誌」と名づけた棚です。
 私は、何でも取って置き魔で、何十年前の週刊誌なんかも後生大事においてあるものが相当あるんです。
 例えば「週刊朝日」。二十歳過ぎから20年余り定期購読していて、最近まではそのほとんどを処分せずに持っていました。
 軽く計算すると、1年50冊あまりで、掛ける20で「週刊朝日」だけで約1000冊強。購読のきっかけは私が好きだった二人の作家、松本清張司馬遼太郎がともに連載物を載せていたからですが、松本さんがいつの間にやら「黒」シリーズの連載から退き、司馬さんが急死して「街道をゆく」の連載が終わってしまったので購読も止まってしまいました。
 ただ、この週刊朝日の表紙は当時篠山紀信さんが撮られていて、定期的に「紀信の表紙写真館」と銘打ってシロウトさんを起用した表紙を作っていました。
 後にミノルタカメラのテレビコマーシャルで名を売って女優になった「宮崎美子」さん(今は「淑子」でしたか)や、フジのアナウンサーからフリーになった「小島奈津子」さんはじめ、ずいぶんたくさんの女性がこの「表紙写真館」から巣立っているのです。
 ただの2、30年前の週刊朝日なぞたいした値では売れないだろうけど、こういった、後にタレントになった女性のシロウト時代の写真が表紙になっている週刊誌なら「お宝」として結構いい値で売れるんじゃないか。そんなことを考えてウェブサイトを作る際に設けた棚でした。
 「週刊朝日」だけでなく「平凡パンチ」や「週刊プレイボーイ」なんかの30年近く前のものには、今、穏やかなお母さん役なんか演じている「大女優」さんの、けっこう過激な写真が載ってたりして、そういう雑誌も案外と持ってる。それらを棚にならべて売るつもりだったのですが―


 広さ6畳の書庫にギュウギュウ詰めにされた本のなかからそれらの雑誌を見つけて引っ張り出すことが、1年経った今も出来ていないのです。


 なんとも情けない「トホホ」な話です。
 部屋にコノ字型にめいっぱいの数置いてある本棚に納まりきらない本が、本棚と本棚の間の通路に平積みされ始め、通路の奥から奥から通路をつぶしていって、入り口まで来てしまうともういけません。たとえ探している本のある位置がわかっていても、そう簡単に取り出せません。いわんや本の場所が不明の場合など、どこからどう手をつければいいのかわからない状態です。
 私は凄い汗かきなので、これからの2、3ヶ月はあの書庫には入れない。窓はすべて締め切って本の日焼け防止のために厚手の黒いカーテンをしてある。真夏に書庫に入るだけで体中から汗が吹き出てきます。腕の汗を本のカバーに擦り付けるか、額やあごから滴り落ちる汗のしずくで床の本の表紙を汚すのが確実と言う状態になるのです。まだしばらくは棚にならべる雑誌を探し出すことなど出来そうにありません。
 とうとう「雑誌」の棚を設けた私自身が辛抱しきれなくなって、先日棚の名前を変えました。「徳島の本・四国の本」です。
 とりあえず、ギュウギュウ詰めの6畳の書庫に置いていない本と、他の棚に以前からならべてあった徳島・四国関連の本を移してきてとりつくろいました。


 まあ「雑誌」の棚は、本が出品できるようになればいつでも新しく作ることが出来るので、上記のような雑誌を集められてる方、もしこの文を読まれてましたら、今しばらく待ってくださいね。