柴門ふみ

 柴門ふみさんの漫画を久しぶりに読みました。
 「小早川伸木の恋」(全5巻)です。


 久しぶりといっても、彼女自身が年1作か2作ぐらいしか漫画を書かないのでそうなってしまうだけで、私自身は彼女のほとんどの作品を読んでると思う。


 私の読書記録を見てみると、去年(2005年)は柴門作品は1冊も読んでいません。2004年は「ヴォイス」と「my little town」の2作。2003年がこれまたなしで、2002年が「非婚家族」1作。
 実に寡作なひとです。(別途、エッセイ本は何冊か出していますが。)


 四国で漫画家を多く輩出している県といえばなんといっても高知県です。
 横山隆一やなせたかしはらたいら黒鉄ヒロシはじめずいぶん多くの著名な漫画家がいます。
 徳島県はそんなに多くはないのですが、中に大物の女性漫画家がふたりいます。
 ひとりは竹宮惠子、もうひとりは柴門ふみです。
 竹宮さんは少女漫画の本道を行く画風ですが、扱う題材が斬新で幅が広く、そのスケールの大きさは男性にもひけをとらず、揺籃期の少女漫画界を引っ張っていってその地位を高めた大家といえます。
 柴門さんは、竹宮さんより10年ほど遅い出発ですが、こちらははじめからヤングアダルト狙いの作風で、現代の若者の恋愛心理を巧みに表現して人気を得ました。特に恋愛の「苦さ」を描くのがうまいと私は思っています。絵ははじめから一貫してうまいと思えないのだけれど、あの画風が、描く題材にマッチしているようにも感じます。
 特に「東京ラブストーリー」がテレビドラマ化されたあたりからは、彼女の漫画はテレビドラマの原作として欠かせぬものとなっており、そのほとんどがテレビドラマ化されて、彼女の知名度を押し上げるのにも一役買っています。
 (逆に竹宮さんの漫画はスケールのデカさがわざわいしてか、ないことはないんでしょうが、テレビドラマ化の話はあまり聞きません。最も最近の大作「天馬の血族」なんかうまくテレビ化あるいは映画化できれば「PROMISE」や「ナルニア国」も顔負けのファンタジー作品が出来そうにも思うのですが。)


 私と柴門さんは歳は3歳ほどしか違わず、柴門さんの実家とは直線距離で1キロあるかないかのところで私が暮らしていることもあり、「柴門ふみ」という漫画家に自然興味をもったという次第です。(何年か前に柴門さんはお父さんを登山事故で亡くされており、そのあと家の表札が変わってしまっているようなので、実家のほうは引っ越されたのかもしれません。)


 私は柴門作品も好きなのですが、ご主人の弘兼憲史さんの漫画も好きです。最近ではなんといっても「黄昏流星群」。私が「老い」を感じる歳になってきているせいも少しはあるのでしょうが、昔の「人間交差点」を思い出させる良質の連作短編集です。これに比べると、「島耕作」や「加地隆介」などはワンランク落ちると思うのですが、それでもいちおう購読しています。
 考えてみると、微々たるものとはいえ弘兼家の生計の手助けをずいぶん長いあいだしてきているなあ。


 なお徳島出身の著名な漫画家はほかにも富永裕美さん、山上たつひこさんなどがいます。彼らのファンに恨まれぬように付け加えておきます。