9代目林家正蔵

 きのう3月13日、林家こぶ平改め9代目林家正蔵(正式には3月21日の口演からだそうですが)のお披露目パレ-ドが東京の上野・浅草で行なわれたとか。
 沿道には14万5千人が集まったとかで、テレビで見ているとたしかに大盛況のパレ-ドだったみたいです。この光景を見ていると「ああ、なんのかんの言っても東京下町にはまだまだ江戸情緒の名残りがあるんだなあ」と思います。
 先代の8代目正蔵(9代目のお父さんの林家三平さんがなくなった翌年に「もともと海老名家から借りてた名前だから」と「正蔵」の名跡を海老名家に返して「彦六」で生涯を終えた人ですが)は、江戸古典落語の正道をいった人で、仲が悪かったと聞いている6代目三遊亭圓生とならんで端正な江戸落語を聞かせてくれた人でした。
 しかしその先代の7代目正蔵林家三平のお父さん、つまり9代目正蔵のお祖父さん)は、噺に漫談的要素も取り入れて、息子三平の先駆をなすような人だったらしい。(林家三平はリアルタイムでテレビでよく見ていたけれど、残念ながらそのお父さんの7代目正蔵は一度も噺を聞いたことも見たこともありません。)こんどの9代目は話に聞く7代目正蔵の芸風を受け継ぐ形になると思います。
 また9代目はお父さんの血を引いた謙虚で明るい性格だし、故・古今亭志ん朝に師事したことで古典落語も熱心に勉強しているようなので、近い将来東京の落語界のトップに登りつめる人だろうと私は思っています。
 誰の言葉だったかは忘れました。明治時代に日本の初代総理大臣に伊藤博文(これも他の総理だったかわかりません)が選ばれた時、だれかが「どうみても伊藤は総理の貫禄がない。あんな人物で大丈夫か。」というと、だれだったかが「貫禄はその地位についたら自然に備わってくるものだよ。」といったといいます。
 9代目正蔵も2年前から襲名が決まっていました。この2年で「正蔵」の大名跡を継ぐ自覚を培って欲しいとの配慮だったとのことですが、たまにテレビで噺を見ると、この2年でこぶ平は間違いなく大きく進歩しています。
 9代目林家正蔵のこれからの活躍を期待する次第です。